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親権・監護権

(6) 養育していない方の親は子供と会えるのでしょうか

これは面接交渉、あるいは面会交流などと呼ばれているものであり、現に養育していない方の親と子供との交流の問題です。家庭裁判所などでは面接交渉という言葉がよく使われています。
ですから、調停などで、もし面接交渉についてはどう考えていますか、あるいは面接交渉については希望されますかというようなことを聞かれた場合、これは、養育していない方の親と子供との交流について希望などを尋ねられていることになります。
相当以前は、あるいは考え方によっては、別れた方の親にたまに子供を会わせるようなことをすると、別れた親のことを忘れかけている子供に思い出させることになって、かえって子供が可哀そうという考え方があったかも知しれませんが、裁判実務ではこのような考え方はとられていません。
夫婦は別れてしまったとしても、子供にとってはできる限り父とも母とも交流できる方が子供の幸せとの考え方がとられていると思っておおむね間違いないでしょう。もちろん、親子の交流の機会をつくることがかえって子供の幸せにつながらないと考えられるような場合は、裁判所としても交流することを認めない裁判をすることもあります。具体的な例については後で書きます裁判例を見てください。
ですから、この問題については、養育していない方の親でも子供と会うなど交流の機会を持つことは可能であるというのが一応の答えになります。
子供との交流といっても、その方法については様々です。家庭裁判所の調停でやっている例をみると、例えば、月1回程度会う、夏休みなどに1泊、2泊する、あるいは直接会うのではなく、差し当たっては手紙や写真のやりとりをして、時機を見て直接会う方向にしていくなど、ケースに応じ柔軟に対応しています。
最初に会うことについて養育している方の親が不安があったり、あるいは子供の反応を見ながらという場合、最初は調停中に裁判所で会うことで面接交渉のきっかけを作るということもあります。
これを試行的面接と言ったりしています。家庭裁判所の調査官という職務の方が立ち会うことがほとんどです。例えば大阪家庭裁判所には、おもちゃが用意された面接室があり、小さな子供の場合には結構利用されています。
もちろん、面接交渉についても、離婚の際、あるいは離婚後、父と母の間でその方法、日時、場所などについて話合いができればそれはそれでいいのですが、もし話し合いで決まらなければ裁判所での解決ということになります。離婚の調停を家庭裁判所でするときには、親権者のほか、養育費、面接交渉などについても決めることが少なくありません。
もし離婚の際の調停で養育費や面接交渉のことを決めなかったとしても、離婚してからでも養育費や面接交渉のための調停を申立てることができます。
養育費であっても、面接交渉であっても、調停で話し合いができれば、裁判所でその話し合いで決まった内容について調停調書という書類を作ることになります。もし調停での話し合いで決まらなかったときは,養育費でも面接交渉でも、家庭裁判所が審判という手続でいろいろな事情を総合して決めることになります。
面接交渉について、裁判所がどのような判断を示しているか、いくつかの例を挙げておきます。もちろん、これは、その事例について裁判所がそのように判断したということで、このような例もあるというくらいのとらえ方で参考にして下さい。
(イ) 離婚後、母が、父とその母親(子供にとっては父方の祖母)に養育されている6歳の子供について面接交渉を求めたケースで、父が、何があっても母と子供とは面接交渉させないと強い拒絶の意向を示していたが、裁判所は、面接交渉について、年1回、毎年7月21日を含む同日以降の最初の日曜日の午前10時から午後4時までなどとする日時、方法、条件について詳しい内容を定めて面接交渉を認めた例(名古屋家裁,平成2年5月31日審判)。
(ロ) 子の監護者とならなかった親と子が面接交渉することは、一般・抽象的には、子の利益にそうものと考えられるとしながらも、離婚前に、父(もと夫)が母(もと妻)に対して繰り返し暴力をふるい、母は受傷している、子供にも暴力をふるったことがあるなどの事情のもとで、父からの子供(長女)に対する面接交渉を認めなかった例(横浜家裁、平成14年1月16日審判)。
(ハ) 一たん調停で面接交渉をすることを決めてあっても、“父(もと夫)が子供との面接交渉を求める目的は、母(もと妻)及びその親族に対し,離婚にまつわる憤懣をぶつけるなど本来のそれ以外の目的にあるのではないかと窺われ、”などとされているケースで、調停条項を取消し、一時的に面接交渉を禁止した例(東京高裁,昭和60年6月27日決定)。
(ニ) 離婚には至っていず、夫婦が別居中で、子供たち(昭和56年生と昭和57年生、審判時には9歳と8歳)が父親とその養母のもとで養育されているケースで、子供たちが母親に対し強い拒否反応を示しているなどとしながらも、子供たちと母親との間の信頼関係を回復することが不可欠であるなどとして、母親と子供たちとの面接交渉を認めた例(岡山家裁平成2年12月3日審判)
などがあり、養育している方の親が面接交渉に反対している、子供が会いたがっていないといった事情があるだけで、裁判所が面接交渉を認めないとはいい切れないと思われます。
ただ、暴力行為のある事案については、裁判所は面接交渉には比較的慎重で、前記の(ロ)のほか、
(ホ) 父親(もと夫)が母(もと妻)に暴力行為に及ぶなどしていたケースで、父親である申立人の面接交渉を認めることはかえって子供たちの福祉を害するとした例(東京家裁平成13年6月5日審判)
もあります。
結局、裁判所は、前記(ロ)の例がいうように、監護していない方の親が子供と交流の機会を持つことは一般的には子の福祉に副うという原則に立ちつつ、具体的な事例においては、それぞれ親子の交流を持つことが本当に子供にとって幸せといえるかどうかという観点から判断しているといえるでしょう。
面接交渉を決めた調停、あるいは審判があるのに相手が応じない場合、養育費の支払いと同じように履行勧告をしてもらう等の方法のほか、間接強制(これについては養育費のところを参照して下さい)が認められている例があります。
(へ) 調停で毎月2回の面接交渉を認める旨の条項があるにもかかわらず、父親が、父親の養育している子と母親とが面接交渉を行うことを拒否している場合、面接交渉をさせないときは父親が母親に1回につき5万円を支払えとした例(高松家裁平成14年6月25日審判、後記(ト)の第一審)
(ト) (ヘ)の場合で、面接交渉を認めるというだけでは強制執行ができる文言(給付条項)にあたらないとして、面接交渉の申立てを却下した例(高松高裁平成14年11月25日決定、(ヘ)の第二審です)
(ト)の裁判例は「認める」という表現で強制執行できるかどうかという裁判官同士でも考え方の分かれるような極めて専門的な法律論を展開していて、(ヘ)とどう違うのか非常にわかりにくいと思います。言葉一つの書き方、あるいはとらえ方で、強制執行ができたりできなかったりするという例という程度にとらえておいて下さい。率直に言って、「面接させる」なら強制執行ができても、「面接することを認める」なら強制執行できないというような、専門家でもわかりにくい、このようなことでいいのかという反対論もあるような議論になっています。ですから、このサイトはできるだけわかりやすくをモットーにしていますが、いざというときには是非専門家に相談されるといいでしょう。
(チ) 面接交渉を拒否している母が開業医であることから、面接交渉1回の不履行につき20万円を支払うのを相当とした例(大阪高裁平成15年3月25日決定)
(リ) 面接交渉を認める審判の文言が「月2回程度の面接交渉を許さなければならず……」とされていた場合で、これだけでは強制執行ができる文言とはいえない(給付条項とはいえない)として間接強制は認めなかった例(東京高裁平成18年8月7日決定。)なお、これも(ト)同様、非常に専門的な法律論となっています。
など種々ありますが、間接強制といったことになると専門家でもなかなか難しいと思われるところがありますので、先ほども書きましたように弁護士等法律に明るい人に相談することがいいと思います。